組み込みエンジニアとは、ハードウェアと密接に連携したソフトウェアの開発を担う専門職です。
具体的には、自動車の制御システムや家庭用家電、医療機器など、私たちの生活を支える多くのデバイス製品の動作を担うシステムを設計・開発します。
近年では、IoTやAI技術の発展により、スマート家電や自動運転車のような高度なシステムが注目されており、それらの基盤を支える組み込みエンジニアの需要も急速に拡大しています。
実際に総務省の調査によると、IoTデバイスの数は年々増加していることがわかります。(以下画像参照)

出典元:総務省「令和3年 情報通信白書のポイント」
企業にとっても、効率的で安定したシステムを開発できるエンジニアは不可欠な存在です。
とはいえ、これから組み込みエンジニアを目指そうとする方は、以下のような疑問を持つこともあるでしょう。
「組み込みエンジニアの仕事内容は?年収はどれくらい?」
「未経験から目指すにはどうすればいい?」
「システムエンジニアとの違いは?」
この記事では、組み込みエンジニアの仕事内容や必要なスキル、未経験からのキャリア形成方法まで、徹底的に解説します。
組み込みエンジニアという職業について深く知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
組み込みエンジニアの平均年収は約550万円!収入アップのコツも紹介
組み込みエンジニアとは
組み込みエンジニアとは、家電製品や自動車などに搭載される専用のソフトウェアを開発する技術者を指します。
家電製品や自動車などに搭載されるシステムは、特定の機能を実現するためにハードウェアと一体化して動作するため、組み込み技術が必要です。
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洗濯機の動作プログラムや車のエンジン制御システムなど
組み込みエンジニアは、製品の基本的な動作を担うシステムを設計・開発します。
そのため、ソフトウェアの設計だけでなく、ハードウェアの知識も求められるのが特徴です。
技術の進化により、組み込みエンジニアの活躍の場は広がっており、IoTやAIなどの最先端分野でも必要不可欠な職種となっています。
組み込み系エンジニアとシステムエンジニアの違い
組み込み系エンジニアとシステムエンジニアは、それぞれ異なる領域で活動しています。
組み込み系エンジニアは、特定のハードウェアに直接組み込まれるソフトウェアを開発するのが主な業務です。
一方、システムエンジニアは、業務システムやWebアプリケーションなど、幅広い分野でシステム全体の設計や要件定義を担当します。
たとえば、洗濯機やスマートフォンの内部プログラムを作るのが組み込み系エンジニアの仕事であるのに対し、企業の基幹業務システムを構築するのがシステムエンジニアです。
このように、組み込み系エンジニアは製品の動作に直接関わる点が大きな違いとなります。
組み込み系エンジニア | 特定のハードウェアに直接組み込まれるソフトウェアを開発するのが主な業務 |
システムエンジニア | 業務システムやWebアプリケーションなど、幅広い分野でシステム全体の設計や要件定義を担当する |
組み込み系エンジニアと制御系エンジニアの違い
組み込み系エンジニアは機器の根幹となるシステムを担当し、人の操作に関わらない部分の開発を行います。
一方で制御系エンジニアはシステムを制御する部分を担当し、人の操作に関わる部分の開発を行います。
たとえば、航空機は飛行場を飛び立ち一定の高度になるとパイロットは自動操縦に切り換えます。
その後、パイロットが介在せずに航空機は一定の速度と高度を保ち飛行しますが、この自動操縦システムは組み込み系エンジニアの開発領域です。
一方で、航空機はパイロットの操縦に旋回したり高度を上げ下げしたりします。
この時の航空機を動かす仕組みは、制御系エンジニアの開発領域です。
組み込み系エンジニア | 機器の根幹となるシステムを担当し、人の操作に関わらない部分の開発を行う |
制御系エンジニア | システムを制御する部分を担当し、人の操作に関わる部分の開発を行う |
制御エンジニアの平均年収は557万円!収入アップに必要なスキル・資格も紹介
組み込みエンジニアの仕事内容
組み込みエンジニアの多くは家電製品や産業用機器等のメーカーに所属しており、製品内に搭載されるシステム開発を担当しています。
具体的な仕事内容は、以下に4つのパートに分類されています。
要件定義
組み込みエンジニアの最初の工程は、要件定義です。
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製品やシステムが満たすべき機能や性能を明確化する作業
たとえば、家電製品であれば「リモコン操作に対応すること」や「省エネモードを実装すること」などの要件を定義します。
要件定義を行うことで開発における目標が具体化し、プロジェクト全体の方向性が明確になります。
ハードウェア・ソフトウェアの設計
要件定義に基づいて、ハードウェアとソフトウェアの設計を行います。
具体的には、以下の通りです。
- ハードウェア設計:製品内部の回路構成やチップ選定
- ソフトウェア設計:ハードウェアを制御するためのプログラムの構造やアルゴリズムを考案
ハードウェア・ソフトウェアの設計がしっかりしていないと、後の開発や運用で問題が発生しやすくなるため、非常に重要な工程です。
開発
設計で定義した内容をもとに、実際のコードや回路を構築するのが開発工程です。
たとえば、組み込みエンジニアはマイクロコントローラに動作を指示するプログラムを書いたり、デバイスドライバを作成したりします。
開発には高度なプログラミングスキルやハードウェアの知識が必要であり、細かい調整が求められる場面も多くなります。
テスト
開発した製品やシステムが正しく動作するかを確認するのがテスト工程です。
- 実機を用いた動作確認
- シミュレーションによる検証など
具体的には、組み込みソフトウェアが予期しないエラーを引き起こさないか、ハードウェアとの連携がスムーズに行われているかを検証します。
組み込みエンジニアの種類
組み込みエンジニアの仕事例として代表的な種類を3つ説明します。
家庭機器分野
日常生活で使う電子レンジやノートPC等のシステム開発を行うエンジニアです。
多くのメーカーが数々の製品を発売しているため、最も幅広い分野と言えます。
エンジニアの多くはこの分野に属しています。
公共機器分野
電車や水道等の公共施設における通信システム等の開発を行うエンジニアです。
常に新しい技術を取り入れて通信速度や通信品質の向上に貢献することが要求されます。
産業機器分野
工場や発電所で使う産業用のロボットアームや溶接機器等のシステム開発を行うエンジニアです。
対象製品は産業用であるため、高精度で高品質が求められます。
一方でユーザーに応じて仕様が異なるため、臨機応変に対応できる機敏さが要求される仕事です。
組み込みエンジニアに必要なスキル
組み込みエンジニアは、プログラマーやシステムエンジニアなどとは違ったスキルが求められることも多いです。
特に以下3つは、必須と言っても過言ではありません。
以下で詳しく解説します。
コミュニケーション能力
組み込みエンジニアにとって、コミュニケーション能力は重要なスキルの1つです。
システムの開発では、ハードウェアエンジニアやソフトウェアエンジニア、さらにはクライアントとの密接な連携が欠かせません。
具体的には、要件定義の段階でクライアントのニーズを正確に把握し、開発チーム全体で共有する能力が求められます。
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要件定義の段階でクライアントのニーズを正確に把握し、開発チーム全体で共有する能力
スムーズな意思疎通が、効率的な開発プロセスにつながります。
プログラミング言語のスキル
組み込みエンジニアはマイクロコンピューターに製品の機能システムを搭載することですが、もちろんプログラミング言語のスキルも必要不可欠です。
特に組み込み系エンジニアが使う言語はC言語、C++、アセンブリですのでマスターして置きましょう。
- C言語
- C++
- アセンブリなど
英語のリーディング能力
組み込みエンジニアは、英語のリーディング能力も重要なスキルです。
技術資料や、開発ツールのマニュアルは英語であるケースが多いからです。
特に最新の技術やグローバルなプロジェクトに参加する場合、英語をスムーズに読む力は大きな武器となります。
英語のリーディング能力を磨くことで、開発の質を向上させ、より多くのチャンスを得ることが可能です。
組み込みエンジニアの年収は約500万円
組み込みエンジニアの年収は、約500万円前後が相場です。
実際に、厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、組み込みエンジニア(システムエンジニア(組込み、IoT))の平均年収は557.6万円となっています。
組み込みエンジニア | |
---|---|
年収 | 557.6万円 |
組み込みエンジニアは年齢が上がるにつれて年収も上がる
組み込みエンジニア以外にも言えることですが、年収は年齢が上がるにつれて上がってい苦ことが一般的です。
実際に厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」の年齢別の組み込みエンジニアの平均年収を見ると、年齢が上がるにつれて年収も上がっていることがわかります。

出典元:職業情報提供サイトjobtag「システムエンジニア(組込み、IoT)
年齢が上がるにつれて年収も上がる理由は、スキル・実務経験年数が増えているからです。
そのため、実力主義が多いIT業界でも年齢とともに年収も上がっていきます。
組み込みエンジニアの年収は日本の平均年収より高い
組み込みエンジニアの平均年収557.6万円は、日本の平均年収より高いです。
実際に、国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、令和4年度の給与所得者の平均年収は458万円となっています。
職種 | 平均年収 |
---|---|
組み込みエンジニア | 557.6万円 |
給与所得者(日本) | 458万円 |
職業情報提供サイトjobtag「システムエンジニア(組込み、IoT)」
国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」
もちろん、組み込みエンジニアの年収は経験やスキル、勤務する企業の規模や業界によって大きく異なります。
特に、大手メーカーや外資系企業で働く場合や、管理職に就くことでさらに高い収入を得られるケースも多いです。
また、フリーランスとして活動する組み込みエンジニアも多く、専門的なスキルや豊富な実績を持つ場合には、案件単価が高くなるため年収1,000万円以上を目指すことも可能です。
- 大手メーカーや外資系企業で働いている
- 管理職として働いている
- フリーランスとして働いている
業界全体で見ても需要が高いため、継続的なスキルアップを心がけることで安定した収入を得られるでしょう。
このように、組み込みエンジニアは技術力次第で高収入を目指せる職種であり、長期的なキャリア形成に適した選択肢と言えます。
「組み込みエンジニアはきつい」と言われる理由
「組み込みエンジニアはきつい」と言われることがありますが、主な理由は以下の4つです。
以下で詳しく解説します。
スキルの習得が難しいから
組み込みエンジニアには、幅広い技術知識と専門的なスキルが求められます。
具体的には、ハードウェアとソフトウェアの基礎知識に加えて、応用するスキルも必要です。
また、実際の製品に実装する際には、リアルタイム性やリソース制約を考慮した設計が求められるため、習得には時間と努力が必要です。
- ハードウェアとソフトウェアの基礎知識
- ハードウェアとソフトウェアの応用スキル
- リアルタイム性やリソース制約を考慮した設計など
このように、高い専門性が必要な点が、スキルの習得を難しくし、「きつい」と言われる理由の1つです。
納期に追われることがあるから
組み込みエンジニアの仕事は、製品開発のスケジュールに合わせる必要があり、厳しい納期が設定されることがあります。
特に、製品のリリースが迫る時期には、短期間での開発やバグ修正が求められる場合も少なくありません。
このようなプレッシャーの中で作業する状況が「きつい」と感じられる原因になっています。
人材が不足しているから
組み込みエンジニア以外にも言えることですが、IT業界は深刻な人材不足となっています。
実際に経済産業省の調査によると、2030年までに約79万人ものIT人材が不足すると予想されています。(以下画像参照)

出典元:経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」
組み込みエンジニアは高度な専門知識が必要とされる一方で、人材が不足している状況にあるため、1人のエンジニアに多くの業務が集中する場合があるのです。
このような人材不足が、仕事を「きつい」と感じさせいます。
常に進化が求められる
技術の進化が速いIT業界では、組み込みエンジニアにも常に新しい知識やスキルを習得することが求められます。
特にクラウドやIoT技術の普及により、必要とされる技術範囲が広がっているため、自己学習を続けなければ競争力を維持するのが難しい状況です。
絶え間なく学び続ける必要があることから「きつい」と言われています。
組み込みエンジニアのキャリアパス
組み込みエンジニアとしてのキャリアパスは、大きく分けて2パターンあります。
具体的には、以下の通りです。
以下で詳しく解説します。
フリーランスエンジニア
組み込みエンジニアとしてのキャリアを積んだ後、フリーランスエンジニアとして独立する選択肢があります。
フリーランスでは、会社員とは異なり、「仕事量」「案件」が自由に決められるため、年収を大幅に上げやすいです。
また、自身のスキルや経験を活かして多様なプロジェクトに携わることが可能です。
なお組み込みエンジニアのフリーランス案件の単価相場は、60万円前後となっています。
実際に当サイトが運営するITエンジニア向けのフリーランスエージェントでも60万円前後の案件が多いです。
単価相場 | 60万円前後 |
最高単価 | 80万円(※) |
最低単価 | 36万円(※) |
フリーランスSEの年収目安は400〜1000万円!単価目安と収入アップ方法も紹介
管理職系エンジニア
最小限のリスクで年収を上げる方法は、現在の会社で管理職を目指すことです。
組み込みエンジニアとして培って来たスキルや経験を生かしてプロジェクトマネージャーやテクニカルコンサルタントに従事することで確実に年収アップに繋がります。
実際に厚生労働省の調査を見ると、役職者と非役職者とでは大幅に年収が異なります。(以下画像参照)

出典元:厚生労働省「(7) 役職別にみた賃金」
ただし管理職系エンジニアは、技術スキルだけでなく、チーム運営やプロジェクト進行管理の能力が求められます。
未経験から組み込みエンジニアになるには?
組み込みエンジニアになるための勉強方法、ポイントについて2つに絞って解説します。
プログラミングスクールに通う
組み込みエンジニアになるためには、この勉強方法が最も確実です。
昨今は講師が現役エンジニアも在籍していますので不明点があればすぐに聞くことができるというメリットもあります。
更にスクールによっては卒業生に対して就職支援もして貰えるケースのありますので組み込みエンジニアになるチャンスが高いです。
Webサイトを利用して独学する
Webサイトで組み込みエンジニアになるための勉強をすることは可能です。
しかしながら漠然と独学を始めても長続きしません。
そこで手始めに目標として「ITパスポート」の取得をお勧めします。ITパスポートは国家試験であり、IT系企業を狙う入門資格と言っても過言ではありません。
合格するための勉強時間は約3か月と言われており、入門者には最適の試験です。その後に同様の予報方法でプログラミング言語を学んでは如何でしょうか。
いきなり高い目標を立てるのではなく段階的に目標を掲げてクリアして行く方がモチベーションも長続きします。
組み込みエンジニアとは|まとめ
この記事では組み込みエンジニアの仕事内容、必要スキルから収入、将来性までを解説して来ました。
組み込みエンジニアは時代の変化に対して適時、機能をアップデートして行くことが求められる職種です。
このためには日頃からアンテナを高くして市場のニーズを感じる意識が必要不可欠です。